維新の前川参議院議員が一審で有罪となった。事前に選挙ハガキを配布した件である。
この事件が世に出た時も触れたが、そもそも本番ハガキを事前配布すること事態は何ら問題ない。事前配布しなければ選挙そのものが成り立たない。争点は「単なる宛名書きの依頼か、事前の宣伝活動か」ということだ。
ハガキを渡す相手によって、それは曖昧に分かれる。『知り合いか否か、自分を支持してくれているか否か』だが、一体どうやって区別するのか?本質的な意味で、それは不可能だ。〝一般的に常識的な判断として〟という判断をせざるを得ないだろう。しかし本来そんないい加減な基準で罪刑法定主義は成立するはずもないのだが。事前配布の相手を『支持者か、そうでないか』を問うたハガキ案件はおそらく初めてだろう。
例えば支持してくれた団体に、選挙ハガキを100枚持っていたとする。相応の団体ならば、もちろんいろんな人たちがいる。敵対政党支持者だって必ず存在する。「私は支持者でもないのに、事前に選挙ハガキを渡された」と言われたらどうするのか。組織がその候補者の推薦を正式に機関決定していればまだ良いが、特に中小の企業や団体はそうでないケースが多い。
今後は宛名書きをしてもらう相手に「あなたは私の支持者ですか、違いますか?」といちいち確認しなければならない。ブラックジョークだ。こんなふうに選挙制度を縮小、さらに縮小していくような制度設計は、民主主義をますます確実に歪めていく。
旧来はある程度、ハガキの無差別配布はオーケーだった。旧民主党時代の民主選挙コンサルタントは、何枚かのハガキを封筒に入れたものを堂々と駅頭で無差別配布させていたくらいだ。前川議員陣営は35名にハガキを配布したらしいが、この数も現場では今後の判断基準とされる可能性がある。選挙違反の立件は、内容の悪質度と分量で決定される。50キロ制限のところを51キロで走っても捕まらないのと似ている。
今回の事件について判断すれば、問題はむしろハガキの書き方説明書だ。書き方の例として「前川さんにぜひ一票をお願いします」としてあるという。これは完全アウトだ。同じ行為でもう何人も捕まっている。私の知人はこれの類似事件で80日以上拘束された結果有罪、保釈金は300万円と、なかなか立派なものだった。
前川議員は弁護士でもある。最終審まで戦って、新しい法解釈を是非とも確立してほしい。
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