安倍元首相が銃で撃たれた。極めて卑劣な犯行だ。日本国内の選挙活動の中での凶行ということに、社会的な衝撃がしばらく続くだろう。
私が一番恐れるのは街頭演説の中で「自分の候補者が襲われないだろうか。襲われた時に自分は守れるのだろうか」とスタッフが参加を躊躇してしまうことだ。選挙最中ばかりではない。秘書や後援者、ボランティアの全ての人達が、日常の政治活動としての街頭演説に参加できなくなってしまったらどうなるだろう。
極めて事務的に考察すると、ここ数十年の政治活動中の殺人は極めてレアだ。交通事故で死亡する確率なんかとは比べ物にならないくらい少ない。しかし社会の風潮は確率論では片付けられない。政治家の活動に参加している学生の母親が「危ないからそんなのに参加するのはやめなさい」と言う。今どきの親なら十分に考えられる対応だ。
政治家の方は悲壮な決意で街頭演説に挑むことになる。一般の候補者にはSPも警備担当警察官もいない。警備会社に頼むケースだって、ほとんど無いだろう。銃で撃たれるなんてあり得ないと思うが、ナイフやカナ槌くらいは持っているかもしれない。危機管理専門のスタッフが常に帯同しているわけにはいかない。女性政治家が女性スタッフだけ引き連れて活動することだって少なくない。
個々で対策、注意するしかないのが現実だ。ブザーを持つ、拡声器で叫ぶ、どんな状況でも周辺目配り要員を置くなど対処法は考えられるだろうが、どれも決定打ではない。
街頭演説、辻立ちを有権者の方々は是非とも温かく見守って頂きたい。「日曜なのに喧しい」「どうせ選挙の時だけでしょ」「あんたが議員になりたいだけだろ」冷ややかになる時もあるのは理解できるが、少しでいいから耳を傾けてみて欲しい。下らない事を言っていたら、近寄って詰問してやればいい。死に物狂いで訴えている人間だって少なくないのだ。
辻立ち一つ自由にできない風潮になったら、この世はお終いだ。
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