選挙の華といえば、やはり選挙カーにおける遊説だ。ウグイス嬢による街宣活動も中央からの有名弁士を多用した街頭演説会も、選挙戦を派手に見せていく。遊説が盛り上がらない陣営は、大体沈滞ムードが漂っている。「煩い選挙カーはマイナス効果、表を減らすだけ」と言う素人さんの論評は完全に的外れだ。
もう一つ、選挙戦の華が存在する。個人演説会だ。個人演説会をきっちりと回していける候補者は少なくなったが、連日連夜感動的な個人演説会を複数回行っていく候補者は、これまたほとんどしっかりと当確を早々決める。
煩わしい、動員が大変で迷惑をかける、手間暇の割に効果が薄い、などと言われるこの二つの選挙の華。手間暇をかけたり、多くの人に迷惑をかけられることこそ、当選に繋がるのだ。候補者自身に魅了がなければ不可能だ。
しかしここ二年で、選挙本番中における個人演説会はほぼ死滅した。コロナ禍である。集会自粛が長期間続き、個人演説会をやれても人数を絞って開催、それも極端に回数を制限する。十数年前各地に見られた熱狂的な個人演説会はほぼ見られない。
選挙のノウハウというのは、ただでさえ継承されにくい。後援者は次々と歳をとり、後継後援者の開拓に誰もが汲々としている。ましてここ三年の選挙事情で個人演説会がほぼ見受けられない状況では、関連ノウハウは滅亡してしまうのではないか。ネット個人演説会は、個人演説会に変われない。ライブに足を運ぶのとYouTubeで見るのとでは、全く受け手の熱狂感は違ってくるのと同じだ。
「まあ、動員できる候補者も少なくなったことだし、この際個人演説会は飛ばしちゃおうか」といった風潮になってくる可能性も高い。しかし私はコロナ禍を脱却したら、個人演説会をきっちりやれた候補者が極めて大きなアドバンテージを持つと考える。公職選挙法は「公示・告示前は何をやってもいいよ。(政治活動として)ただしその後の本番中は何もしてはいけないよ。でもそれでは身もふたもないから、これとこれとこれだけは許してやるさ」という法律だ。個人演説会は数少ない許された大きな選挙ツールなのだ。ここで票を取らずどうするのか。暗くなるのが早い時期の選挙は、17時以降は街頭演説会よりも個人演説会が有効だ。
可能なことを最大限に実施、利用する。選挙の鉄則は不変だ。
コメント