ばらまき2 オートコール

 前回触れたノンフィクション「ばらまき」に以下のような記述があった。
 『中国新聞に一本の電話がかかってきた。案里本人の声が聞こえてきた。会話が成り立たないことから、録音された音声だと気付いた。音声は案里の主張をとうとうと述べていた。記者になって13年、国政選挙や地方選挙で取材してきたが、こんな経験は初めてだった。案里事務所はどこまでやる気なんだ。国政選挙とはいえ、こんなことまでするなんて聞いたことがない。』
 いや、これにはビックリした。オートコールによる選挙活動が普及して、もう20年以上は経つ。今やこれは全く一般的で合法な選挙手法であり、時期、内容などによって非常に有効なツールである。
 ちなみに文中では「無作為に選んだ広島県内の固定電話に自動音声のオートコールで電話をかけていた」とあるが、おそらくこれは間違いだ。無作為ではなく可能な固定電話の全てにかけているはずだ。少なくとも地域を選別して、決めたエリア全戸に電話している。そうでなければ活動として効力は薄いからだ。ギリギリの戦いをしていた案里氏は120万戸を越える県下全世帯に電話をしていたと私は思う。約7割に通じたとしてざっと80万世帯に電話したことになる。2000〜3000万円の経費が必要だ。
 オートコールは首長選挙や小選挙区などに特に有効だ。「音声の録音を流すなんて、有権者に対して失礼だ」という人もいるが、要は割合の問題。候補者の考えを聞けて聞いて良かったと思う人と、迷惑だと思う人のどちらがどの位多いのか。ちなみに私の経験値から言えば、1万件のオートコールをやって、返ってくる苦情電話は1パーセントにはるかに満たない。さらには一般的な運動員によるお願い電話だって苦情は相応数ある。
 多くの選挙経験者たちは数少ない自分の狭ーい選挙経験から「選挙とは○○であるべきだ」と語るが、要は大きく全体を俯瞰して選挙戦の全体像を組み立てることが重要なのだ。
 選挙経験者やバッジを付けた偉いセンセイたちよりも、通常の世間感覚をもった一人の青年の方が有権者の心を捉える手法を考えつく所以かもしれない。
 
 

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