河井夫妻による大規模買収事件を記録した中国新聞取材班による「ばらまき」を読んだ。これを読んで恐ろしかったのは旧来は合法とされていた「政治団体から政治団体の寄付について、報告書に記載しているか記載していないかに関係なく場合によっては買収罪とする」という見解を検察が明確に示していることだ。事実あんり氏の子飼いであった渡辺典子県議は毎年のように河井側から同額の寄付をもらっていたにも関わらず、裁判長は他の被買収人との基準に照らし合わせて買収罪が成立すると認めた。
今回のケースは被告人が100人にも金銭を渡していたから特異なケースとはいえ、団体からの寄付を買収とされたならばどのようにして活動費を渡せばいいのだろうか。活動費といっても大方はガソリン代や人件費など実費がほとんどで、むしろ赤字が一般的だ。
事が起こるたびに公選法は拡大解釈され、旧来は一般的でどの候補者も行なってきた通常のことが違法とされる。私はいつも言っているがこの際古ーい古ーい公選法は抜本的に改正して、今の世の中にあった法律にいい加減改正したらどうか。そもそも告示・公示になってようやく交付されるビラやポスターに一枚一枚貼らねばならない証紙を全候補者はどう思っているのか。30万枚のビラに人海戦術でシールを貼らねば選挙もできない参議院全国比例の候補者で、これが正しい選挙だと思っている人が一人でもいるのだろうか。
人件費の使い方だってそうだ。そもそも車上運動員に金銭を支払っても合法なのに、地上運動員に支払ってはいけない理由は何だろうか。「車上運動員は専門職だから、地べたを這いずり回る一般運動員とは違う」だと?冗談じゃない。地上運動員の良し悪しこそ選挙戦は大きく左右される。そもそも職業差別ではないのか。
一度の選挙で使って良い法定選挙費用は選挙や選挙区ごとに細かく決まっているのだから、その範囲で人件費や印刷費を自由に使わせた方が、公平の原則としてまだ健全なのではないか。下らないシール規制はそれで撤廃できる。
お金も組織も無い候補者ほど、単純労務者を多数雇ってシール貼り作業をやらねばならない。組織に守られてお金も人も豊富な候補者はそんな心配もなく全力で運動に傾注できる。
矛盾だらけの公選法の一面を見せてくれる「ばらまき」だった。
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