牛丼と国策

 吉野家の牛丼が値上がりした。387円だった牛丼並が39円値上がりして426円となった。吉野家史上、最高値だという。私は(ああ、こういうことなのか)と思った。日本の産業政策と国際政策に将来性が見えてこない。
 コロナ禍で世界中の産業が停滞する中、食肉産業も例外ではなかった。生産性が低下し、牛丼の原料である米国産バラ肉価格が1、7倍に跳ね上がった。利益削減と企業努力なのだろうが、よくもまあ吉野家はこの程度の値上げで我慢できるものだ。
 日本はもう農産物も海産物も、ずっと買い負けが続いている。特に金持ちになった中国は14億人を食わせようと必死だ。金のある中国は庶民の肉食が爆発的に増えた。豚肉の生産には同重量の7〜8倍の穀物が、牛肉の生産には15倍の穀物が必要らしい。「肉よりも穀物を食べようよ」と言ってももう遅い。
 日本の食料自給率はカロリーベースで37パーセントと極端に低い。気候変動や人口問題等で食料不足、水不足は遠い未来の話とは思えなくなってきた。未だに「食料は輸入すれば良い」と公言する国会議員は少なくないが、脳天気以外の何物でもない。
 第一次産業を国策でパワーアップさせねばならない。それが時代の要請、急務だ。そもそも農業従事者の平均年齢が70歳近いなんて、どう考えても変じゃないか。牛丼の値段が上がったとか、そんなミクロのセコイ話ではない。将来を見据えた政策を、なんて小学生みたいなフレーズは今さら言いたくない。私が学生だった30年くらい前から、少子高齢化の話がすでに出ていた。一体政府はこの30年間、少子化対策として何をしてきたのか。
 先ほどすき家で朝食を食べてきた。メニューが大幅に変わっていて、何と牛丼を中心とする朝メニューが消滅していた。私の注文した鮭焼きセットは同値段であるにも関わらずポテトサラダが消えていた。冗談じゃない。やっぱり大切なのはミクロの世界だ。

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