訳あって白いポメラニアンと一週間ほど二人暮らしになった。
非常に温厚である。まだ六歳なのにいつも悠然としている。犬はご飯やおやつを食べている時に邪魔されると怒ると言うが、食事中にイタズラしてものほほんとしている。
「一緒に寝るか」と誘った訳でもないのに、勝手に布団に入ってくる。私が寝返りを打つと、合わせてポジションを変える。話しかけるといつもニコニコする。くつろいでいたのにわざわざ近くまで寄ってきて、顔や手を舐めたりする。散歩に連れて行くと、見事な尻尾を靡かせて颯爽と歩く。何だか知らないが、少し自慢そうな顔をしている。
こう書いていくと理想的な可愛い犬だ。いや、実際可愛いのだが、先日意外な面を見た。あれほど温厚なのに高速道路に乗ったら料金所のおじさん、おばさんに歯を剥き出し天をも裂けよとばかりに吠えるのだ。それは料金所ごとに続いた。理由は分からない。
比較的良好だった支援者が些細な事でいきなり怒り出す事がある。本人はもちろん、周りの人に聞いても不明なことすらある。謎は深まるばかりだ。
思いっきり濃い支援者ならば探求は可能だ。周辺の人々に聞き込みをしていけば、人生観や時の状況、環境などから推察できる。しかしそこまでの付き合いではなく、相手方の仕事や家族などを詳しく知らない距離感の場合、まま起こる事件事故だ。
宗教観の禁忌に触れてしまったのかもしれない。過去の体験から、その話題はタブーだったのかもしれない。嫌いな人、肌に合わない人が、事務所内にたまたまいたのかもしれない。もう想像しても仕方がない世界だ。
そんな場合、私はしばらくもうほっておく事をお勧めする。深掘りしない。気づかないふりをする。下手に触ると更なる事故が待ち受けている。他の支援者に波及するケースが非常に多い。ここが一番怖い。なあに、心配しなくても良い。戻ってくる人は戻ってくる。次回の会合に平気の平左で何事もなく席に座っていたりする。
選挙を視野に入れた後援会事務所にはいろんな人たちがいる。同じ会社の人とは違う。キリンさん、ゴリラさん、ゾウさん、トラさん…多種多様なのが特徴だ。
白ポメは帰りも料金所のたびに必死で吠えていたが、走り始めると常に元のすまし込んだチビ犬に戻っていた。
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