サンデージャパンがほっこりするような野生のクマ親子を映し出している。風船を見つけた子グマが道路でそれを追いかけ、親クマがそれを見つめるという微笑ましい画像だ。
見ようによっては、クマ被害多発で、エセ野生保護主義者のクレーマーが増殖する昨今、それを助長するようなとんでもない切り口でもある。テレ朝系なので「ハハ〜ん、人権派・反保守へのアンチテーゼなのか」と穿った見方をする。この手の映像をバンバン流されると立派な世論形成だ。
取り上げたいのはクマ問題ではない。ここに候補者が行う辻立ち活動の本質があるのだ。
クライアントの新人首長候補はかなりの劣勢だった。通常では挽回不可能だ。告示まで残り一ヶ月、現職に対して自己の主張である「財政再建」を浸透させるしかない。しかしテーマとしては難しく、分かりにくさは否めなかった。しかし有権者にとっての目にみえる差別化はそこしか無い。
連日の辻立ちでは手を変え品を変え、常に財政再建だけを訴えた。「ニーズの高かった老人対策や教育支援はどうするのか」という自陣営からの指摘には、無理矢理にでも財政再建問題を論ずる中で語った。
どうせ真剣に辻立ち話なんか聞いてもらえない。伝わる可能性は低い。しかし二つのテーマを語るとそれは二分割され、三つ語ると三分割される。伝わる確率は減るばかりだ。
毎日三十回近い辻立ちをやった。一ヶ月で九百回だ。告示に入る頃にはすっかりと「財政再建候補」として認知されていて、互角の戦いに持ち込み勝利をもぎ取ってしまった。
ポッと出のタレントではない。客受けするための一発芸でもない。ホンモノの選挙戦を戦い抜いたこの首長の舵取りは、きっと成功するに違いない。そう思える迫力が、告示後以降ははっきりと垣間見えた。
「このビラは一回ポスティングしたから、次のビラを」と運動員は求めるかもしれない。配布していて「いや、何度も見たよ、この日ビラは」と多くの人に言われてからが、同じビラでもう一勝負だ。
コメント